概要
本レポートでは、日本市場におけるプロテイン飲料の市場規模、成長トレンド、主要な競合企業、そして消費者ニーズの傾向について分析しています。健康志向の高まりや高齢化社会の進展を背景に、プロテイン飲料市場は着実に成長を続けており、今後も拡大が見込まれています。
市場規模
日本のプロテイン飲料市場は着実に成長を続けており、複数の調査によると以下のような市場規模が報告されています:
- プロテイン飲料市場は2023年度に238億円規模で、2029年度には400億円規模に拡大する見込み
- より広範なプロテイン市場全体(飲料、粉末、バーなど全形態)では、2023年に約1,190億円(前年比7.6%増)
- タンパク補給食品市場全体では2023年に2,580億円規模、2024年は前年比2.8%増の2,763億円が見込まれる
特にRTD(Ready To Drink)タイプのプロテイン飲料は、手軽さと常温保存が可能な点から市場拡大が続いています。2015年に本格的に市場が形成されて以降、コンビニエンスストアやスーパーでの販売拡大により、一般消費者への普及が進んでいます。
成長トレンド
日本のプロテイン飲料市場における主な成長トレンドは以下の通りです:
ターゲット層の拡大
従来のフィットネス愛好家やボディビルダーから、一般の健康志向消費者、女性、高齢者へと市場が拡大
製品形態の多様化
粉末タイプだけでなく、RTD飲料、バータイプ、ヨーグルトなど様々な形態での提供が増加
植物性プロテインの台頭
環境への配慮や健康志向から、特に女性層を中心に植物性プロテイン(ソイ、ピーなど)の需要が増加
機能性の多様化
単なるタンパク質補給だけでなく、美容効果、ダイエットサポート、高齢者の筋力維持など、多様な機能性を訴求する製品が増加
パーソナライズ化
個々のニーズやライフスタイルに合わせたパーソナライズされた製品提案が増加
「ステルス栄養」の広がり
味噌汁のような親しみやすい食品形態へのプロテイン統合など、日常的な食品への自然な形での栄養素の組み込み
主要競合企業
日本のプロテイン飲料市場における主要な競合企業は以下の通りです:
明治(SAVAS/ザバス)
- 日本のプロテイン飲料市場で約8割のシェアを持つ圧倒的リーダー
- 粉末・顆粒プロテイン市場でも国内シェア32%を誇る
- 1980年に発売された老舗ブランド
- 「ザバスミルクプロテイン」が主力商品
- 2022年度の販売金額は前期比9%、2023年度は同17%伸長
森永乳業
- 「inプロテイン」ブランドで展開
- 2021年3月に森永製菓の「inブランド」とコラボした「inPROTEIN」シリーズを発売
- 運動後や間食などさまざまなシーンにマッチしたラインアップを展開
伊藤忠商事(マイプロテイン)
- 英国発のスポーツ栄養ブランド「マイプロテイン」の日本における独占ライセンス権を保有
- 2021年に日本市場に本格参入
- 手頃な価格感で市場に躍進
- ファミリーマート(伊藤忠の子会社)でも販売
その他の競合企業
- 森永製菓:「inバープロテイン」などバータイプの製品で展開
- VALX:ボディビルダーの山本義徳氏が推奨する効率的なタンパク質摂取を訴求
- タマチャンショップ:「タンパクオトメ」で女性向け美容プロテインに特化
- イッティ:「おいしい味噌汁プロテイン」で高齢者市場を開拓
日本のプロテイン市場は細分化されており、上位5社の市場シェアはわずか13.65%と、大手企業と中小の専門ブランドの両方が存在する競争の激しい市場となっています。
消費者ニーズの傾向
全体的な消費者動向
- プロテイン製品を購入したことがある消費者は全体の3割強
- 年代別では20代、30代と若い年代ほど経験率が高い
- 男女ともに今後も約3割が購入したいと回答(女性の購入意欲がわずかに高い)
年齢層別のニーズ
若年層(20代〜30代)
- 粉末タイプや焼き菓子状のバータイプのプロテインの摂取が主
- 体重管理や筋肉増強を目的とした利用が多い
- 味と利便性を重視する傾向
中年層(40代〜50代)
- 女性では美容効果と健康維持を目的とした利用が増加
- 男性では筋力維持や健康管理を目的とした利用が多い
- 40代、50代の女性ではホエイプロテインとプラントベースがほぼ同率で購入
高齢者層(60代以上)
- 筋肉量・筋力の維持(サルコペニア予防)を目的とした利用
- フレイル予防や栄養補助としての利用
- 摂取しやすさ、消化のしやすさを重視
- 親しみやすい形態(例:「おいしい味噌汁プロテイン」)を好む
性別によるニーズの違い
女性のニーズ
- 20〜40代:「ダイエット・体型維持」と「美容」が主な動機
- 50〜60代:「筋力向上」と「免疫力向上」を重視
- 美容効果:コラーゲン、ビタミン、ミネラルなど美容をサポートする成分配合を好む
- 植物由来製品への関心が高い(定期摂取をしている女性の約4割がプラントベースをメインに摂取)
- 日本の女性の約30%しかプロテインサプリメントを摂取していない(成長ポテンシャルが大きい)
男性のニーズ
- 筋肉増強や体力向上を目的とした利用が多い
- ホエイプロテインの利用率が高い
- 効果と機能性を重視する傾向
製品形態に関するニーズ
- 粉末タイプ(18%)と焼き菓子タイプのプロテインバー(17%)が特に人気
- プロテインヨーグルト(10%)、プロテインドリンク・スムージー(10%)も一定の需要
- 粉末タイプの補完的位置づけとして食品タイプのニーズが高まっている
- RTD(Ready To Drink)タイプのプロテイン飲料市場は、手軽さと常温保存が可能な点で成長
今後の展望
日本のプロテイン飲料市場は今後も成長が続くと予測されており、以下のような展望が考えられます:
市場規模の拡大
2029年には400億円規模に成長する見込み
ターゲット層の多様化
特に女性市場と高齢者市場の拡大が期待される
植物性プロテインの成長
環境への配慮や健康志向から、植物性プロテインの需要が増加
製品形態の多様化
RTD飲料の継続的成長に加え、日常的な食品へのプロテイン統合が進む
パーソナライズ化の進展
個々のニーズやライフスタイルに合わせたパーソナライズされた製品提案が増加
持続可能性への注目
持続可能で環境に優しいプロテインオプションへの関心が高まる
日本のプロテイン飲料市場は、健康志向の高まりや高齢化社会の進展を背景に、今後も安定した成長が期待される市場と言えます。特に、従来のターゲット層であったフィットネス愛好家だけでなく、美容やダイエット目的の女性、体力増進目的の高齢者など、新たな消費者層の取り込みが市場拡大の鍵となるでしょう。